十一階の部屋

作詞

 

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白い小さい机

皆さん、この世は確かに存在するとお考えでしょうか。それはちがいます。確かに星としての地球は続くでしょう。人類が生活したと言う痕跡は残るでしょう。でもそれは錯覚です、妄想に近い構造体です。

昨日あなたは何をした、何を食べた、誰と恋をした、そんなもの何処に残ってますか、あなたの記憶の中にしか残ってないでしょ。そうなんですこの世界があると思うのは、それぞれが記憶の中に書き記しているからだけなんです。記録を取るのを止めるとこの世は存在しません。今まで生きた生命の積み重ね、虚構がこの世界なのです。

今までに生きた人類だけでも何百億の記憶が積み上がってます。サッカーくじのキャリーオーバーと同じです。それが引き出されたら、一瞬にして消えてしまいます。有史になってからの世界しか残ってません。それ以前はあくまでも、資料に基づく推測に過ぎません。銀行に残された取引台帳、メディアに書き留められた儚い記録、それが真実なんて誰にも証明できません。書き手次第でどうにでも書き換えれます。そんないい加減なものなんです、この世界なんて。

あんたは、私がお腹を痛めて産んだ子やで、父親はあの人やでと言われても、それは母親と言う人がその人の記憶に置いて宣言しているだけで、誰も裏打ち出来ません。言ったもん勝ちの世界です。戦後焼け野原で、ここは俺のもんやと言って膨大な土地を取り込んだ輩がいましたがそれと同じです。

俺の愛はお前のものや、お前の愛も俺のものやろと言っても、誰も相手にしてくれません。公証役場にでも言って、この女の愛は私のものですと公正証書でも巻かないとやっておれません。愛なんて一番不確かなものです、それぞれの記憶にしか残せないのです。裁判に訴えても相手にもしてくれません。契約書でも残ってますかと言われるのが関の山です。

こんなええ加減な世界に、命を描けたり、泣いたり笑ったりしているのが現実です。まだブログにああでもない、こうでもないといい加減な事を書いてるブロガーの方がまだましと言えます。とりあえずテキストにして残してる分。

でも二人暮らした部屋は、不動産屋に返す前は確かに痕跡は残ってます。壁に残った傷も、床に残した染みも確かに証明してくれます。不動産屋がリフォームに出した瞬間、西陽の当たった部屋も一瞬にして綺麗になります。二人暮らした痕跡なんて留めて置けません。

誰にでも有ります。若いときの恋、不確かな覚束ないヨチヨチ歩きの恋。思い出すだけで切なくなりますね。或いは顔から火が出る方もおられるでしょう。それが良いんですね、まだ何も固まってない柔らかな愛、触れたら壊れそうな愛、手探りの愛今となっては良い思い出です。

愛の巣どころか、デートする場所もままならない二人に取って、世間の目なんて気にしてられません。ままごとみたいな恋でも、それこそ手鍋一つで始めた愛の部屋、どんなに優しかったでしょう、暖かかったでしょう、それが誰の胸にも有ります、形は違うけれど確実に有ります。それを大事に胸に仕舞って置いてください。

 

十一階の部屋

作詞 つばめのす

白いスプレー買ってきた
二人で塗った小さい机
ベランダからは何も見えなかった
灰色の空が覗くだけ
あの人がいたから あの人が好きだから

二人の夢も載らない小さな机
ガスコンロを載せると一杯だった
それでも楽しい日々が続いた
夜は一枚の毛布で抱き合って寝た
あの人がぬくいから あの人が好きだから

私が専門学校に通いだして
一年が過ぎた頃 あなたは出て行った
小さい机で朝食を食べた後
何も言わずに 出て行った

二人で塗った小さい机
あの人が好きだった あの人が好きだった

 

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