七年前の小豆氷

作詞

何年かに一度、冷たい夏がやって来る。島の北向の海岸に喫茶店が並んだ通りがある。名前は海岸通り、サングラス無しには眩しすぎる昼下がり、一組の恋人たちがやって来た。

言い争いをするでもなく、仲良くするでもなくかき氷を一つ注文した。暫くするとかき氷が来て、向かい合った二人の間にそれは置かれた。小豆や果実が入っていて、二人でも余りそうな量だった。

二人とも手を付けない。暫くすると女が口を開いた。「私たちこれからどうするの?このまま付き合うの?それとも別れるの」。男の返事は無かった。ひんやりとした時間が流れる。砂浜は通りを挟んでいるから波の音も聞こえない。

その日の夜、島の空港の小さい待合室に男だけすわっていた。所作げもなくスマホを弄っている。電話が掛かってきた。

「私、これからあの男の所に行くよ。しつこいから。それでもいいの」 「・・・・・・ 」 「抱かれるかも知れないよ、わたし自信無いよ」                             男の夏は終った。島の最終便は海岸通りを掠め翼を少し振ったように飛び去って行く。

 

七年前の小豆氷  作詞つばめのす

七年前の夏 食べた小豆入りのかき氷
もう そんなになるんだ
別れたのが 2011年夏

二人でシェアした海岸通りの喫茶店
今年も小豆氷の旗がはためく
脳幹を貫く冷感が あの時の記憶を呼び戻す

あの夏も暑かった なのに二人の回りは
エアポケットのように冷たかった
噛み合わない会話 化粧の乗りの悪い
あいつの顔 食べ終わる頃には
心の芯まで冷えていた

その時にはもう別の男が入っていたのだろう
あいつの心にも体にも そうでないと
あのちぐはぐさは 説明が付かない
七年経ってやっと分かった 小豆氷の冷たさが

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