彩湖

作詞

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生きる術 生きる目的

荒川第一調節池の中にある貯水池。広大な敷地に満々と水を湛える。荒川が暴れて洪水になった時のために、旧荒川跡地を貯水池にした。1997年彩湖完成直ぐにその効果は表れた。構図になると荒川との分離堤を乗り越えて水が流入し荒川下流の氾濫を止めた。

彩湖道満グリーンパークが隣接し、埼玉県や東京都から週末になると大勢人が訪れる。園内には、野球場、テニスコート、ソフトボール場、バーベキュー場など施設が充実し公園自体は無料で利用できる。駐車場は有料。彩湖の回りは自転車道がありサイクリングが楽しめる。

戸田市側には東京ヤクルトスワローズの二軍の本拠地が有る。荒川左岸の堤防を歩けば、都内を一望でき翻って北を眺めれば関東平野の大きさを実感出来る。

関東の河川は一度荒れると手が付けられないほど暴れる。それは人の人生をも彷彿とさせる。

綾瀬

荒江はさっきからやきもきしていた。お座敷に呼んだ芸子が時間になっても姿を見せなかった。今夜は、中川と隅田の座敷だった。二人とも荒江の料亭の大得意だった。荒江は仲居見習いの綾瀬に電話をするように命じた。

綾瀬が表玄関に来て、「もう出られたそうです」と告げた。荒江は「しょうがないわね」と舌打ちした。そこへ芸者の江戸千代と鬼怒香がすいませんと言いなが現れた。荒江は急き立てるように店に押し込んだ。

綾瀬は今月中頃から働き出した。何も出来なさそうなので、取り敢えず見習いとして下働きをさせている。何でも東北から流れてきて男と同棲していると誰かが言っていた。荒江は別に気にしなくって、面接のその日に次の日から来るように言った。本所の何処かに貧乏書生と住んでいるらしい。

慌ただしく座敷を終えた江戸千代と鬼怒香が降りてきた。草履を揃えながら、綾瀬は江戸千代にそっと聞いた。「私でも芸者に成れますか」江戸千代は笑っただけで何も答えず出ていった。

次の日の昼過ぎに、江戸千代は綾瀬を近くの喫茶店に呼び出していた。二人は日当たりのいいテーブルに向かい合って座っていた。マスターが二杯の珈琲を持って来てテーブルに置いて行った。

「どうして芸者に成りたいの」と江戸千代は聞いた。
綾瀬は生い立ちや今までのことを話し出した。それは、その当時どこでもよく聞く話だった。元々北海道の苫小牧に住んでいたが父親が蒸発し、母親と二人で母親の実家のある青森県の五所川原に移り住んだ。そこで母親は置家に入り娘を育てた。綾瀬も大きくなり仕込みとして働くようになった。そこに出入りしていた書生と懇ろになり、二人で東京に逃げてきた。書生の名前は利根川と言います。

そこまで聞くと、江戸千代は芸者に成るなんてそんな生易しいものではない、ましてや男と住んでいるなんてとても無理。私も置屋の女将によう頼みませんと答えた。

暫く何事もなく綾瀬は働いていたが、ある日書生の利根川が店に怒鳴り込んで来た。女将の荒江が何事かと事情を聞くと、綾瀬が客の中川と出来ていると、どうしてくれるんだと言うばかり。もうその時には綾瀬は店に出ていなかった。

綾瀬は荒川の堤防を歩いていた。いく宛もなくさ迷う自分の人生を思いながら、自暴自棄になる心を押さえながら池の方に目をやる。水鳥が水面を滑るように飛び立って行く。私も自由に飛べたらなと涙が溢れてきた。爪を立てても歯が立たなかった人生それでも生きていくことしか頭に浮かばない。これからどうしよう。満州でも行くかな。

東京に出てきたものがすべて成功する訳もない。殆どの人間が失敗して泣きながら東京を離れる場合が多い。夢破れてもその後の人生は続くわけで、決してそれで終わりとは行かない。むしろそれからの人生が長く辛いはず。それでも生きていく男と女、ごみ箱に棄てられた人生でも外連味もなく生きていく凄み強かさを荒川の土手に突き刺して綾瀬は慟哭した。明日は強く生きると。

この話し話しフィクションであり、ドキュメントである。誰の側にも存在し誰にも起こりうるストーリーです。でもそれに恐れず立ち向かう事こそが生きる証であり人間の存在価値である。お金を儲けた出世した幸せになったということは、あくまで副次的な事であり人生の目的でも成果でもない。どう生きたかが問われ称賛される。

 

彩湖

作詞 つばめのす

彩湖の畔に立ちて 思うこと
水面を飛ぶ カモメより
我に 自由なし
この広い世界に置かれ
なすすべもなく 嘆くだけ

どんよりとした空の下
漠漠と 広がる平野を見れば
どの爪を立てれば
掻き傷を残せるのだろう

荒ぶる川の土手に立ち
いにしえの情景にさほど
変わっていないことに気付く
心の彩りをめくりいけど
思いの色に出会わぬ
苛立ちが 胸を責める

水面を行く鳥たちや
グラウンドで 色めき騒ぐ
女子運動部員の あっけらかんとし

 

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