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法善寺の恋
法善寺から心斎橋筋に出る何本かの通りの一つにその店は有った。雰囲気のある立派な店構えの鮨屋だ。中に入ると店内は薄暗く白木のカウンターにはそれ用の椅子を逆さにして載せて有った。店はもうやってなかった。奥にある階段を昇ると座敷が有った。その一つに今日の目的である女将さんが住んでいた。
主人が亡くなって本店は店仕舞いをしていて阿倍野の地下街にある支店だけ営業していた。主人が存命中は郊外の住宅街に百坪の家も建てていた。叩き上げの寿司職人としてはかなりのものである。ミナミの一等地に店を持ち、阿倍野に支店を出すなんてなかなか出来るものではない。
今日は、その鮨屋の三人姉妹の次女を貰いに来た。付き合って四年目になるその子は私より一つ下だった。二十三歳になる、私はまだ学生だった。
「あんた失礼やけど、どうしてご飯食べていくの」私は返答に詰まった。無理なのは私にも分かっていた。でも若い二人が出した結論は中途半端ないい加減なものだった。
ワタシが卒業して働くまでは、私の親の世話になろうと思っていた。そりゃ、夫婦でミナミの鮨屋まで出した女将にしたら何しょうむない考え方してるのになります。でもその日は渋々なっとく。してくれました。
でもそこから話は前に進みません。経済力が無い二人が結婚まで漕ぎ着けるには海が深すぎました。山が高すぎました。
女は収入も腕もある支店の職人といい仲になり、それに気づいた私と大喧嘩になった。結局二人は別れることになった。涙が止まらなかった。愛は金を待たないのか、金は愛に馴染まないのか、良くある若いの話でも有った。
男に経済力がつくまで女の年が待てなくなる。計画も設計図もない若さと言う我が儘だけで突っ走った愛。それでも今となっては誉めてやりたい。付き合った四年間は珠玉の物語だった。そこには世の中の常識や非情さも入らない純粋さだけがあった。
今はそれでいい、二週間アルバイトをして月に一回京都に遊びに行く。二人が初めて結ばれたのも北山のホテルだった。車もない二人がトコトコと隠れるようにホテルに入り、知らん顔で出て来てタクシーで京都駅に行く。
一ヶ月アルバイトをして冬のスキーに行く。彼女は支店の手伝いをして応援してくれた。法善寺の本店の回りには美味しい店がたくさんあった。本店の前には夫婦でやってる洋食屋、ビーフシチューが絶品だった。インディアンカレー、濃厚な珈琲屋、周防町のばらの木牛肉のバター炒め。京都では三条に有ったハンバーグの店に行き三条のコーヒー屋に行きました。
何も結果が出る恋だけがいい恋じゃ無いと思う。青春二人がふらふらに成りゴールは勿論のこと途中も中途半端で終わった恋だけど、今思い出しても甘酸っぱい気持ちにさせてくれる。
今も会いたいけれど、会ったところでどうともならないけど、それでも偶然何処かで会えたらそんな素晴らしいことはない。無理して知り合いを尋ねて聞けばある程度のことは分かると思うけどそれはしない方がいいと思う。
女の化粧ポーチの中は見ても分からないし何か見るのがタブーのような気がする。大人しく私の綺麗にしたところだけ見てなさい、余計なことはしなくても良いですと言われてる見たいです。それは愛情と言うか女の気持ちも分からないままでいいの、私が表現したことだけ見て後は知らん顔していて良いから。良く女は言う私は大丈夫だから。結局大丈夫じゃなかったのだが、
このショートストーリーはフィクションです
ブルーレッド
作詞 つばめのす
間口1メートルのお店 1.6㎡
リップスティック ブラシ ポーチ
洋風小間物屋
男の子には関係無いけど
彼女に付き合って店の前まで
店主は男
お客が入ると店主は外へ
男の子には識別不可能
どこに何があるかなんて
ジャングルのカメレオン
19なのに常連さん
なのに訳あり娘
大した訳じゃ無いけど
お父さんが早く亡くなった
流行ってる寿司屋さんだったらしい
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