時海に落とした忘れ物

作詞

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会えない訳

この世に私が居て、あなたがいるのにお金が無くなったから会えなくなった。私が居て、お金が有るのにあなたが死んで会えなくなるのとではどちらが辛いでしょう。

この世にあなたと会えなくなる理由なんて幾つか起こりうる。大抵経済的な理由、愛が理由なんて場合は大したことがない。お金の問題が一番きつくて腹が立つ。しょうむないお金のために別れるなんて承諾出来ないけど、大抵の人が従わされている。愛情の問題なら諦めるしかない。でもお金のことでなら諦めるにも諦めきれない。

彼女が三千両で買われて行った花魁なら、もうこの世に二人が居たとしても会うことは出来ない。無理矢理に駆け落ちして逃げるしかない。でも大抵心中で終わる位しか結果が思い付かない。だから愛し合った頃の思い出を抱き締めて歩いていくしかない、この砂漠のような都会を。今日も無情の風が吹く。手に持った愛と言う風車が空回りする。

時と言う草原に置いてきた思い出は空から見ても分からない。地を這って手探りで求めても見つかることは無いでしょう。ぼんやりとあそこら辺にあるのだが位しかわからない。

朝焼けの雲に尋ねても、夕焼けの空に問い掛けても答えてくれない。三日月にも星空にもあなたは居ない。オーロラの輝く北の空にもあなたはいない。時の鱗が一枚一枚剥がれていくだけ、心臓が一度打つたびに一枚、瞬きをする度にまた一枚と落ちていく。時は有るのにあなたはいない、そんなおかしなことはないでしょう。

あなたのいない訳なんて幾らでも計上出来る、後付けで。あなたの消えて行った時期は幾らでも作れる。でも誰に聴いても教えてくれない。正常な精神の持ち主には厳然たる時の流れが見えるらしい。
私には無理だ、あなたが消えたあの日からはまともな思考さえ覚束ない。もう暦さえどうでもいい。

お金のせい、時のせい、愛のせい、離れている距離のせい、性格のせい、健康のせい、回りの人間関係のせい、別れる理由なんて幾らでも有るでしょう。そんな環境の中で人は生きて行かなくてはならない。愛が消えて別れていくのが一番楽かも知れませんね。

愛する訳

何故愛の終わりがこんなに苦しいと分かっているのに愛を始めるのでしょう。それはそれなりの意味と理由が有るからです。ただ簡単に誰でも誰とでも愛せることは出来ません。色々な障壁を越えて初めて愛することが出来るのです。だからその愛が崩壊したら膨大な辛苦を蒙るのです。

あの時は愛せたのに今は愛せない、こんなに愛が残っているのに今もこんなに会いたいのに。何が二人をそうさせたのでしょう。時間軸のずれ、地軸の傾きそれとも脚本家が居てストーリーを書き直したからか。見えているのに、声が聞こえているのに手を握られない理不尽な仕打ち。無理矢理戻そうとするとストーカーにされてしまう。

坂道から見える遠くの街の明かり、見上げる星空は今も光り輝くこの街角に佇めども君に会う約束もない。いまだ消せないナンバーを押しても応答してくれない。遠くで救急車の音が響く。

街の光りほどの愛が有っても、星の輝きほどの出会いが有ってもあの時のあなたはもう戻ってこない。時間の海に棄てた愛の欠片はもうアインシュタイン先生でも見つけられない。愛のブラックホールに吸い込まれて行ったのかな。

一度失った愛はもう重ならない、あの時は合同の必要十分条件を満たしていたはずなのに。何度も愛を重ねた筈なのに。愛は時間の狭間をすり抜けて行くタイムトリッパー、ツルツルの宇宙服を着ている。素手では掴み切れない。まして愛と言う血にまみれたこの手では尚更掴めない。

私と言う星座のスペクタクルと、あなた星座のスペクタクルの回転軸は微妙にずれていく。一度ずれるともう元には戻れない。恨んでも恨んでももう天城山は越えた、ルビコン川は渡った。昔の神が嘘を付いて約束した事など何千年経とうが実現しない。まして普通の私が約束した事など叶うはずもない。もうない諦めた。

時海に落とした忘れ物

作詞 つばめのす

あの時はそうするしかなかった
あの人は俯いていた
昨日夢で見た 久し振りのあの人
変わらなく綺麗だった

あの時のシダックスももうない
あの人は帰らなかった
昨日夢で会った 他の人の臭いがした
どこかよそよそしかった

夢は時の遺失物係 でも誰も届け出てくれない
店を出て午前0時の人混みの中に
男と歩くあの人を見た
あの人の姿を遠くに見ながら
電話を掛ける 大丈夫の返事
静かに携帯を切った

あの人のいる夢の中に行くには
乗車券がいるみたい でもポケットの中は
空っぽ
あの時の雑踏をさ迷い続ける
午前0時の鐘の音が響く
今も気付いていない
愛が乗車券の代わりになることを

 

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