縫製

作詞

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AIと天才

AIと天才にピアノを演奏させたらどちらが上手でしょうか。恐らく良い勝負になるでしょう。AIなら一拍を十六分割いや三十二分割して、しかもキーを押すスピードや強さまで指定して入力してくるでしょう。ピッチのずれも百分の一ヘルツまで合わせてくるでしょう。ピアノの場合は調律師の腕も有るからそこまで影響しませんけど、取り敢えず細かい点までクリアにしてくるでしょう。そこまで来るには凄腕のSEが何ヶ月も掛けて打ち込みをして仕上げる必要があります。

方や天才ピアニストも生まれて直ぐ上手い人などいないでしょう。三才くらいから毎日何時間も練習して何十年もの結果が今発露するのであって一朝一夕にはいきません。文字通り血の滲むような努力があってなせる業だと思います。演奏すれば何分の話ですが、その陰には膨大な時間がその一瞬のために費やされているのです。

そんな話は、そこかしこにあります。大体が人の人生がそうである、計り知れない日常を繰り返し学校に通い塾に通い、クラブ活動をして毎日三食を食べる。学校を卒業して働いて何かの一瞬のために今までの時間を放出する。それが夢のためだったり、愛する人のためだったりする。みんなよく似ている。ITも音楽も人生も絶え間ない打ち込みが有ってその積み重ねの上に成り立っている。

映画なんてその最たるものである。あるシーンを撮るために何時間も天気待ちしたり、時には季節まで待つ。カメラアングルを変えるために同じセリフを何度も俳優にしゃべらせ、一つの表情を捉えるために何テイクも繰り返す。仕上がりのフイルムを見てはダメ出しを迫られ妥協するすることの恐怖と戦う。

決まり事を演じるにも、新しいものを創り出すにもそれぞれの苦しみがある。それが成し遂げられた時の喜びを期待して創作者は一歩一歩山を登っていく。膨大なデータベースを処理するためのプログラムを打ち込むSEも、素晴らしい曲を作るために一音一音入れていくミュージシャンも皆同じ苦しみと喜びを持っている。終わることを知らない作業に追われ寝食を忘れ日々を過ごす。

裁縫もその一つであろう。どんな素晴らしいデザインが有り、コンセプトが有ってもそれを具現化するスキルが無ければそれこそ絵に描いた餅だ。平面のデザイン画からその意図を読み取りパターンに落とし込む。それを生地に載せて裁断する人、昔はそれを手で縫う人がいた。お針子さんだ、今は素晴らしいミシンがある。それを駆使して自由自在に形を作っていく。

近所にミシン屋さんの工房がある。最近知ったのだが、そこは知る人ぞ知る業界では有名な会社らしく毎年全国から応募者があり何人かの新入社員を取り、裁縫の仕事と勉強を両立させ頑張っておられるみたいです。オートクチュールに出す服でそこでしか縫えない物を一流メーカーが依頼しに持って来るらしい。夜遅くまで明かりがついているのは恐らく、ミシンの勉強をされているのだろう。今のミシンはコンピューターの固まりみたいだもの。

服でも曲作りでも自分の思い描いてる物を作るのは並大抵じゃない。今有るアイテムやガジェットは便利だけど、使いこなすのが難しい。かなり勉強して慣れないといけない。それにイメージを組み入れていく仕事は感性が要求される。例えばファッションは千差万別の人の好みを満たすのは一人のデザイナーだけでは、とても無理だと思う。だから多種多様なブランドがある。それを何を勘違いしたのか、自分の所の一社で何十万人もの趣向をカバー出来ると思う輩が出て来る。ファッションなんて強烈な個性なんだから統一できるなんて思う方が可笑しい。通販何てITの力を借りて70億の細かい注文を受けて整理して細かく丁寧に対応するからここまで成長出来たのであろう。それを没個性の方向に走っても上手くいくとはとても思えない。一人の人間の万能感が成せるほどファッションの世界は狭くも甘くもない。

それは音楽や芸術の分野でも同じだろう。卓越した技術や感性を持っていても世界を牛耳ることも、それを長く維持することはできない事は歴史を見ても明らかだ。ITも同じだろう、何人かの天才が暗号を解くために、あるいは解かれないために発明したコンピューターを後に続く人たちが、何万人も何十年も掛けて磨き上げてきた世界です。何億と言う信号を何億分の一秒の間に流してしまえるのも、何十年に渡って打ち込んで来たシステムエンジニアや技術者たちのたゆまぬ努力があるからである。それはこれからの素晴らしい未来に繋がっていくだろうし、またそうでなくてはいけない。

縫製

作詞  つばめのす

パターン チャコ ミシン

私は針子 凄いお針子
一生懸命勉強してきた
後三年 寮に寝起きして
故郷で店を開くの

でも休みの日は淋しい
一人でデザインの練習
まだ恋をしたことがない
今は我慢 家族のためにも

恋のパターンも 知らない
恋のチャコも 使ったことがない
恋のミシンも 使いこなせない

でもいつか工房を持って
ミシンを駆使して 夢を縫い上げる
その時は未来のあなたにキスしてもらうの
格好いいスーツ縫ってあげる

恋のパターンも 知らない
恋のチャコも 塗ったことがない
恋のミシンも 使いこなせない

 

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