サガリバナ

作詞

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熱帯に咲く歌姫

私は南西諸島に咲くサガリバナ今日も誰かに抱かれて朝に散る。何億と言う花のうちの一つ。熱帯亜熱帯に咲く花は、甘ったるい香りで虫を捕まえるから気を付けてね。

その夜の男は兵隊だった。遠い異国から来た白人だった。私はこの村で生まれこの村の男と結婚した。子供が出来ないと言う理由で離縁になった。仕方なく異国の軍隊の基地の中で働いた。

私はその夜身ごもったらしい。兵隊の男は暫くすると何処かへいってしまった。私は一人で産んだ。女の子だった。私は昼間基地で働き夜はスナックで働いて娘を育てた。

娘は貧しいながら健やかに大きくなっていった。私の住む村は戦争に負けて異国の軍隊にとられていたが娘が、二十歳になる頃元の国に返ってきた。暫くすると娘は一人で、その国の都に働きに出ていった。

十年経った夏三人の子供を連れて帰ってきた。長女、長男、末っ子の女の子目がくりっとして可愛いかった。又、娘とその子供たちと暮らし始めた。その頃私は小さなスナックを開いていたので、娘は昼間働き夜は私のスナックを手伝った。そうして孫三人たちは大きくなっていった。

末の孫娘が、歌も踊りも上手であれよあれよと言ううちに、都から人が買いに来て国一番の人気歌手になってしまった。少しはお金も入れてくれて生活は少しずつ楽になっていった。

私は、夜毎咲く南の島のサガリバナ甘く咲いて朝に散る。どの国の、どの村の掟は金持ちに優しく貧しい者に厳しかった。娘は厳しい掟に負け村を出ていき、行った先の村の掟の厳しさに耐えられず生まれた村に帰ってきた。

いくら厳しくても生まれた故郷に帰るのは、花の悲しい定め。何処の村に行っても石を投げられ酷い言葉を掛けられ、それでも生きていく。村人に言わせれば、厚かましく逞しく。

そんな村人でも、娘が器量良しだと言い寄って来る者もいる歳に関係なく言い寄って来る。下心満載で、女はそれを利用していく術をいつしか習得していく。そして村の誰かと再婚し村の掟に嵌まっていく。それで赦された訳ではない。村人達は娘が幸せになる頃にまた出自のことを持ち出して苛めて来る、退屈だから面白いからと言う位の屁のような理由で。村の娯楽である。

サガリバナはサガリバナの人生しか用意されていない、世代を重ねてもその色を濃くしていくだけ。サガリバナは亜熱帯だけではない、名前を代えて地球上のどこにでも咲く。北極圏でも砂漠でも、一夜の花を求めて昆虫達が群がってくる。花達は覚悟を決めて捌いていく、そして
次の日も次の夜もまた美しく咲き乱れて散っていく。

花の種は風に吹かれて飛んでいく。何処へでも種の意志を風は聞いてくれない、種もまだそんな考えも出来ない年頃。着いたところが、岩の上だろうと砂漠の砂の上だろうと海の上だろうと、そこで暮らさなくてはならない。過酷な運命の身に与えられたアイテムはとにかく生きると言う自覚も出来ないプログラムだけ。

電子的なエネルギーが有るのか、精神的なオカルトパワーが与えられてるのかそれすら分からない。プロトコルの文字は意志とは関係なくトコトコ歩いていく。どこが頭でどこが尻尾かも分からない行列、付いていくしかない。

何億行、何兆列と番号付けされた名札を付けて生かされていく、とても生きていくとは思えない。そのセクションに着弾した種子はジャックの豆の木みたいに、ぐんぐん伸びていく。天を目指しているのか、地の底に行くのかそれすらも分からない。

四角い苗床の上に撒かれた運命の種子。そんな板がいくつも並べられた巨大な部屋の中は、全天候型の環境が作り出せる。管理人は善良な神か、邪悪な悪魔か。伸びた弦はその運命を切られる時に一瞬ハサミの手元の向こうに管理人の顔を見た気がする。

娼婦の運命と歌姫の運命は間、髪も入らない。それはナノの畝間、鑓水の流れに左右される儚き悪戯。それを嘆いても致し方無い、鳩尾の内側に拳を呑んだような不快感をなだめて生きるしかない。保険で処方された薬物の飲み過ぎか、胃壁の怒りを鎮めるために飲んだ昨夜のアルコールのせいかそれすら定かでない。

娼婦にさえ、医療保険がある国に感謝して今日も乾杯。胃が破れるか、肝臓が破裂するかどちらが早いか。それでも良いから生きておくれ、あなたの咲かせた花が夜毎咲き乱れて種子がいつか天の国に届くようにあなたのぶら下がっている蔦は天の国に繋がっているから

 

サガリバナ

作詞 つばめのす

偽りの世界に
女の生きる道は細い
私は歩いていく 生きるために

遺伝子は強い者を選ぶ
DNAは綺麗な物を好む
私は そんな女

甘い香りを漂わせ 虫達を引き寄せる
空からの弦にぶら下がり 花開き
朝には咲き落ちる 一夜花

そうして日を 喰って 生きていく
その時は本気 本性のまま
男にぶつかって行く 演技でも何でもない
燃え尽きていく

一夜咲く花 サガリバナ
男にすがりながら生きていく
そんな私を 愛する男たち
愛し愛され 水面に落ちていく

 

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